大好きだから大丈夫

最初で最後の婚外恋愛(ただいま遠距離)

気持ちが溢れ出した日

彼と別れて数年後、私は今の夫と結婚し、間もなく子供を二人授かりました


家事と育児に追われる毎日でしたが、自分の大切な趣味の時間も楽しみながら、平凡な主婦の生活は、平凡に過ぎていきました



平凡な主婦だった私には、ふとした時に思い出す人が二人いました



ひとりは初恋の人



小学校一年生で同じクラスになって、すぐに好きになってしまい、その後中学校を卒業するまでの間、たまに他の男の子が気になる時はあっても結局ずっと好きだった人

告白したわけでもなく、ずっとただの友達のまま、別々の高校に入学して、その後バッタリ会うこともありませんでした




もうひとりは、もちろん彼



今の私にとってかけがえのない

大切な、大切な人





再会の日から約一年半ほど前、彼が私の住んでいる街で仕事をしていることを知りました


お別れの日からその後の数年間は、彼が故郷の街で仕事をしていることだけは知っていました

その後も、彼が今どこでどうしているのか、知ろうと思えば知れたのに、それをすることはありませんでした

なぜか、知ってはいけないような気がしていました


なのにその時は、興味本位、というより、すごく知りたい気持ちでした

「知ってしまった」というより「知りたくて調べた」のです


彼がどこにいるのか知りたいと思った時点で、もう「会ってみたい」と思っていたんだと思います


でも、きっと彼は故郷にいて、会えることはないだろうと予想していたので、知る前までは軽い気持ちでした


ところが「彼がこの街にいる」


おまけに、彼が仕事をしているであろうその職場は、私の自宅から電車で数駅ほどのところです


ものすごく動揺しました


いつからいたのかは知らないけれど、こんなに近くにいたなんて



彼が結婚しているかどうかも知らなかった私は、いろんな想像をしていました


独身なのかな

結婚して、家族でこの街に住んでいるのかな

彼のことだから、結婚したけど浮気して、離婚してバツイチかも

この街のどこに住んでいるのかな

どこかでバッタリ会うかもしれないな


・・・想像はどんどん膨らみます



「彼がこの街にいる」


それを知ってから、私の気持ちは日に日に変わっていきました

普通に暮らしてはいるものの、ことあるごとに彼のことを思い出し、彼のことを考えるようになりました


電車やバスに乗れば「彼が乗っているかも」

買い物に出かければ「彼にバッタリ会うかも」


少しほろ酔いの夜、月を見上げては「彼もこの月を見ていたらいいな」



以前と変わらない生活でしたが、心の中は、確実に彼のことが中心の毎日になっていきました




彼が私の住む街にいることを知って、ちょうど1年が過ぎた頃

再会した日の半年ほど前


私はある場所へ用があって、ひとり出かけることになりました


そこへ行くには、彼と一緒に講義を受けていたあの場所の最寄り駅を通ります



デートをするようになった頃

彼と何度も一緒に立ったホーム

一緒に乗った電車



そちらの方面に行くことは、彼と別れた後、たったの一度もありませんでした

その電車に乗り、彼のことを思い出さないはずがありません

しばらく電車に揺られると、その思い出の駅で電車が止まりました


駅のホームは新しくなっていて、私の思い出とは全く変わってしまっていました

それなのに、電車が止まっているほんのわずかな時間に、たくさんの記憶が、まるで大きな波のように、一気に押し寄せてきます



ホームまでの階段を駆け上がる時に、私が手を繋ごうとすると

「誰かが見てるから」

と逃げる彼

ちょっと拗ねた私が先にホームに上って振り返ると、ゆっくりゆっくり階段を上ってくる彼



そんな彼の姿が、彼の表情だけでなく、着ていた服まで鮮明に浮かんできます


誰かのことを思い出すだけで、こんなに胸が苦しくなったことは、生まれて初めてでした


どんどん溢れる思い出に、気持ちがついていけなくなったのか、うれしいのか悲しいのか自分の感情を理解することもできなくなり、こみあげてくる涙をただ必死にこらえていました


「もう、彼に会わずにはいられない」

ずっと抑え込んでいた自分の気持ちが溢れ出したのは、きっとその日でした