大好きだから大丈夫

最初で最後の婚外恋愛(ただいま遠距離)

彼の誕生日

彼と私、生まれたのが同じ季節


彼の方が2年先



出会った頃にも、その季節をふたりで過ごしていたはずなのに、お祝いをした記憶がないどころか、再会するまで、お互いの誕生日すら知らずにいた


その頃、彼はきっと、故郷の恋人(今の彼の奥さん)と誕生日をお祝いしていたのかもしれない



再会してお互いの誕生日を知り、出会って20数年目にして、初めて一緒にお祝いできるかもしれないことを、とても幸せに思った




去年の彼の誕生日



たくさんの偶然が重なって、彼の誕生日の前日から、一泊旅行ができることになって


しかも、再会後の初デート


なにより、彼の誕生日を、私がいちばんにお祝いできるなんて



予定が決まると、すぐに彼がホテルの予約をしてくれた


私は、行きたい場所をどんどんリストアップ


「徹夜しないと全部行けないなぁ」

と、彼があきれるくらい


だって、デートは20数年ぶり

しかも、彼の誕生日に


こんなにうれしいこと、あっていいの?




ふたりで過ごせた


はじめての、彼の誕生日





当日、駅のホームで待ち合わせ

彼は、私を見つけて近づくと、すぐに私のスーツケースをひいてくれて


ふたりで電車に乗る


若かったふたりが乗った、あの電車ではないけれど

またこんな日がくるなんて、夢みたい


乗り換えの駅で降りて、ふたり、初めて手を繋いで歩いた


再会してから、手を繋いで歩いたのは、この時が初めて

懐かしくて、うれしくて


エスカレーターに乗るだけで、ドキドキして

ホームに並んで立っているだけで、ニヤニヤして


次の乗り換えの時は、乗り換え時間が1分しかないのに、次の電車が発車するホームが遠くて

電車を降りると、彼はスーツケースを抱えて、走る、走る

私も彼の後ろを、走る、走る


間に合った


息を切らして、座席を探す

ちょうど向かい合わせに、ひとり分ずつ空いていて、そこに別々に座る


ホントはくっついて座りたかったけど


向かい合わせなので、目を合わせては、ニヤけちゃう

顔を見ながら、LINE


私「大好き」

彼「あと3駅」

私「カワイイ顔」

彼「カワイイ顔、どこに」

私「あなたの」

彼「楽しくやりましょう」

私「早くちゅ〜したい」

彼「ゴム忘れた」

私「買わなきゃ」

彼「朝買った、駅の薬局で」


笑いが抑えられない

朝から駅の薬局で、そんなの買ってる彼の姿を思い浮かべたら、おかしくて


目的の駅で降りて、スーツケースをコインロッカーに入れて

街を歩く、ふたり、ずっと手を繋いで


超観光スポットのその街に、ふたりとも今まで一度も行ったことがなかった

この先、テレビなどでこの街を見る時、必ず今日のことを思い出すね、ふたりとも


ずっと手を繋いで、ずっと笑って、ふたりで歩いたこと、思い出してね


電車でホテルに向かい、チェックインして、荷物を置いて

すぐに出ないと、今日行きたいところ、全部周れない


でも、ふたりともずっとがまんしてたから

今日はじめてのキス


ふたりで、来られて、よかったね

こんなに楽しいなんてね



大好きだよ



いつまでも止められないキスを

なんとか止めて


ホテルを出て、また電車で移動

私がいちばん行きたかった場所

大きな大きな公園の、その片隅にある、小さな神社

そこは、縁結びの神社

いくつも並ぶ鳥居を抜けて、ふたりでお参り


「ずっと楽しく、ずっと笑っていられますように」

彼が目を閉じて、小さな声でお参りする

その横顔をずっと見ていた



大好き



暗くなる頃、ホテルの近くまで移動

途中、私の憧れのお店で、オレンジのタルトと、ベリーのタルトを買って


居酒屋が並ぶ通りで、お店を探す

何軒も「満席です」と断られ、彼がちょっと疲れてきた

すねてる


ちょっと高そうだけど、ここは?

と、私が彼の手をひいて入ったお店

「おふたりなら」

小さな個室に案内された


乾杯


注文した唐揚げ、食べながら

「お前の唐揚げの方がウマイ」

って言ってくれた


昔の思い出話、たくさんした


彼だけが覚えてたこと

私だけが覚えてたこと


ふたりだけの思い出


あんなに悲しかったお別れの場面

彼が覚えていなくて

「なんで覚えてないの〜?」

と言ってる自分は

彼の車の色を間違って覚えてて


お互い様だね


こんな時、すごい偶然に、彼と私が出会った頃、講義を一緒に受けてた、私のことも知ってる、彼の仲良しの男性から、飲みの誘いのLINEが来て


イタズラ好きの彼

「今○○(私の旧姓)とふたりで飲んでます」

送信!


えー!待って!待って!

と焦る私を、ニヤニヤ見つめながら


「というのは嘘で、自宅ですので、今日は行けません」

送信


ふたりでゲラゲラ笑った


ちょっと酔ってきた私は、たまらなくなって、彼の頰にキスしてしまった


彼と話してると、楽しすぎて、時間があっという間に過ぎてしまう


お店を出て、ホテルへ向かう


酔った私は、彼の腕に抱きついて歩く


ひとりで酔って、彼が恋しくなって

泣いている、いつもの私


でも、今日は、彼がいる

私の腕の中に

こんなに側にいてくれる


とっても幸せ


歩きながら、ふたり目が合うと、どちらからともなく、キスをした


人混みなのに



ホテルに戻り、もう一度


乾杯


ずっと、向かい合って、彼の足の上に私の足を乗せて、たくさんキスしながら、ずっと話す


ふたりとも酔っちゃって

大笑いして話してたら

「あ!忘れてた〜!」

時計を見ると、0時を10分も過ぎてる!

彼の誕生日になっちゃってて


あわててロウソクを出して


タルトの上で、ふたつの数字が

ロウソクの火でゆらゆら光ってて


酔ってるから、大声で

「happybirthday」を歌う私


彼がロウソクの火を吹き消した


「おめでとう!」

と、彼に抱きついた


こんな日が来るなんて

本当によかったね


私達、また会えて、幸せだね


憧れのタルトをふたりで食べて



それから、たくさん愛し合った


長い時間、ずっと彼に愛してもらった


幸せ、本当に


彼の体と、私の体が

ずっとひとつになってて


離れたくない

ずっとこのままでいたい



酔ってるし、疲れて、眠って





目覚めたら、彼がいる


夢なのかな


彼の背中が、ここにある


大好きな彼の背中


顔を埋めて



翌朝、もう一度

たくさん、愛し合った



チェックアウトの時間


ホテルを出て、コーヒーショップへ


ここを出て、駅に着いたら

ふたりのデートは、終わり


同じ電車では帰れないから



向かい合って、コーヒーを

「ふたりでこんなに楽しい旅行ができて幸せだね」

という笑顔と

「もうすぐお別れだね」

というさみしい顔と

頼んだコーヒーが甘すぎて

「失敗したね」

という残念な顔と


どれだかわからないような顔をして

ふたりでゆっくり飲んで


コーヒーショップを出て、駅へ向かう


あまり言葉が出てこなくて

朝の空気の中、静かに、ふたりで歩く

手を繋いで


今から大きなバスに乗って旅行に向かう楽しそうな人達の団体を、通り過ぎる


駅に着いた



改札口から少し離れたところで、握手の手を差し出した彼は、私の手をギュッと握ると

「振り返らずに行くから、お前もすぐに、自分が行く方に行くんだぞ」

と言う


そして、旅の間中、ずっと彼がひいてくれていたスーツケースを、私に返して


見つめ合って

「またな」

「またね」


本当に一度も振り返らずに、彼は改札口を抜け、見えなくなってしまった



ずっと彼がひいてくれてたスーツケース

出発の朝より重く感じて


さみしい



涙をふいて



彼を見送ったら行こうと決めてた場所

少し楽しみにしてたのに、彼がいないから、心が晴れない


そこで見つけたキレイなもの

本当は彼と見たかったけど


写真に撮って、彼に送る


写真を見た彼からLINE

「今、乗り換えて、発車するところ

写真、キレイだね

かわいいよ、お前は

楽しかったよ

ありがとね

一生忘れない、誕生日の思い出

できました」



ありがとう


あなたのことが大好き



少し泣いて


「帰ろ」



ひとりだけど、ひとりじゃない


たくさんできた、彼との大切な思い出


思い出しながら、電車にゆられた