大好きだから大丈夫

最初で最後の婚外恋愛(ただいま遠距離)

彼と父

彼と私が出会った20数年前


仲良くなって、デートをするようになった頃

彼は、私の実家に泊まったことがある



彼と知り合う前後に、実家に恋人が来たことはあったけれど、泊まったのは、今の夫以外には彼だけだった

しかも、夫とは、彼と離れてしまってから知り合っているから、私がはじめて実家に泊めた男性は、彼だった



私の故郷へ彼が来てくれて、デートをした夜

居酒屋でふたりで飲んでいたら、彼が帰れる電車がなくなってしまった


再会してから、彼とこの話をしたら

「それは俺の作戦だった、ずっと一緒にいたかったから帰りたくなくて」

と言っていた



今、これを書きながら思い出した


あの日の彼、酔うにつれて、だんだんデレデレしてきてた

私の腰に手を回したり、顔をじーっと見つめてきたり

あの頃も、酔うと感情が溢れてた

なんだか、あの時の彼の顔まで思い出しちゃって、ドキドキしてきた


私と離れてた間も、飲んでる時に側にいる女性と、そんな雰囲気になっちゃうこと、たくさんあったんだろうな


ダメだ、余計なこと考えちゃってる


おいといて



「え?もう、電車ないの?」

「どうやって帰るの?」

「帰れるの?」

「どうするの?」

なんて、私の方が焦って、彼とやりとりしてた気がする

でも、結局、家に泊めてあげるしかなくて


実家に彼を連れて帰り、怒られるのも覚悟で、母に

「みんなで飲んでたんだけど、この人だけ家が遠くて、帰れる電車乗り過ごしちゃって、泊めてあげてもいい?」

みたいなことを言って


母も、もう来ちゃってる彼を放り出すわけにもいかず、訳もわからないまま了承してくれた


私の部屋で、ふたりで寝たんだっけ


それにしても母、よく彼と私を同じ部屋で寝かしてくれたなぁ

まぁ、他に泊まれる客間もない、狭い家だったから、それしかなかったんだろうけど


その夜、彼は家族を気にして、なんにもしなかった


別々のお布団で、清〜く、ふたりで寝たんだっけ



翌朝、休みで家にいた父は、近所の喫茶店へ彼と私を連れて行った


不器用な父が、彼と話してる姿、忘れられない


父はきっと、結婚する相手を連れて来た、と思ってたかもしれない


講義の後、そのまま私に会いに来た彼は、確か、スーツ姿だったから



お父さん、騙したみたいでごめんね


残念ながらその頃、彼には恋人がいたし、結局その人と結婚したから



私の父は、大酒飲み

彼と同じ、酔った時しか本音を言わない人だった

シラフの時は家族ともほとんど話さない人で

お酒でたくさん失敗をして、お酒に苦しめられて、それでもお酒がやめられずに、10年ほど前に亡くなってしまった


周りにたくさん迷惑をかけたけれど、実は自分がいちばん傷ついていて

ガラスみたいな心の、優しすぎる人だった


父のお酒は、決して楽しいお酒ではなかったけれど、飲んでいる父としか話ができなかったからか、周りがどんなに煙たがっていても、私は飲んでいる父が嫌いじゃなかった

最後には潰れてしまって、いろいろ大変な目に合わされるのだけれど、それでも



父と同じ酒飲みだから、彼を好きになったわけじゃないと思う

だって、再会する前、彼がこんなに酒飲みだなんて、知らなかった


そして、再会してみたら、彼は愉快な大酒飲みだった

そして、もっともっと好きになった



今の夫は、父が飲まないように、父に飲ませないために、一緒に食事をする時は、自分も一滴も飲まず、父にもお酒を勧めなかった

私の実家に集まる時は、誰もお酒を飲まない、静かな食事ばかりだった



彼だったら、と考えてしまう


父と一緒に、楽しいお酒が飲めたんじゃないかな


そんなこと考えてしまう



彼と父、コーヒーじゃなく、お酒を一緒に飲んでたら、きっともっと忘れられない思い出になったかもしれない



彼と父が、楽しく飲んでるところ

見てみたかったな


手のかかる酔っ払いがひとり増えて、きっと、ものすごくめんどくさくて、母と私で手を焼いただろうな



大好きな彼と、大好きな父

そこに私もいて


一緒にお酒が飲みたかったな





今、彼と私がこうして繋がっていること

父はきっとどこかで見ているだろう


私の子供達のことを、世界一愛してくれた父

私が一度も見たことない顔をして、私の子供達を見つめていた父


許されないことをしている私を、責めるかもしれない

それとも、いつものように黙っているのかな


もし今度会えたら、一緒にお酒を飲もう


酔った勢いでいいから、私をぶん殴ってくれないかな


抱きしめてもらうより



お父さんと同じ大酒飲みの彼のこと

大好きで、離れられない


ごめんね