大好きだから大丈夫

最初で最後の婚外恋愛(遠距離)

『マチネの終わりに』

大切な、思い出の一冊

『マチネの終わりに』(平野啓一郎 著)




彼と一泊旅行ができた、去年の彼の誕生日


2日目の朝、一度も振り返らなかった彼を見送った後、私は行く場所を決めていた


少し楽しみにしていたその場所も、彼を見送ってひとりになってからでは、なかなか気持ちが晴れなくて


その後、帰る前に、行ってみたかった大きな本屋さんに立ち寄った


本屋さんのカフェで少し休憩をして、出ようとした時、一冊の本の装丁が目に留まった

とてもキレイで私好みの色


手にとって、帯に書かれた文字に、ドキッとさせられた



結婚した相手は、

人生最愛の

人ですか?



これは読まなきゃダメかも


手にしたその本を、すぐに買った



帰りの電車で少しずつ読みはじめた

けれど、数行読んでは、旅行中の彼の顔、彼の声、彼の手の温もりを思い出し、彼が恋しくなる

そして、悲しい気持ちに襲われて、集中できない

少し読み進めたけれど、結局、帰ってから、またはじめから読み直した



彼との思い出の最後に出会った本

帯に書かれた文字にも、なんとなく運命的なものを感じてしまっていて

すごく大切な一冊になりそうな予感がしていた


すぐに読み終えてしまいたくなくて、わざと、ゆっくり読んでいこうと思った



毎晩、寝る前の時間

温かくしたお酒を一杯用意して


この頃に買ったばかりのアルバム

『LP1』FKA twigs

いつもそれを聴きながら



疲れていたり、お酒の方が進んでしまったりで、一度も頁をめくらずに眠ってしまう日もあれば、どんどん進んでしまって時間が過ぎる日もあった


真ん中を過ぎたあたりから、なんだか読み終えるのがさみしく思えてくる

そんな本だった



お互いが最愛の人だと知りながら、様々な出来事に翻弄されて

このふたりは、結ばれるのか、結ばれないのか


結末を知らないままでいいから、このまま読み続けていたい

読んでいる時間がすごく幸せ

そんな一冊だった



そして読み終えた時

この物語の私の思い出の中に、なぜか、彼がいた


登場人物達の人柄や生き方に、彼や私が重なる要素は何ひとつなかったのに



登場人物達が出会えた時

別れの時

思いが届かずにもどかしい気持ちでいる時

その時その時の感情を、まるで彼と私の気持ちであるかのように、読んでいたのかもしれない



その後、その本の装丁を見ても、もう一度読んでみようかと少し頁をめくっても、あのステキな物語と一緒に、彼のことを思い出す



読み終えてしばらくした頃

この本を読んでいた時にいつもかけていたアルバムを、久しぶりに聴いた時

本のことが頭の中いっぱいに思い出されて、また同じように、彼のことも思い出して、自分でも驚いた



本と、音楽と、彼

全部でひとつの思い出になっていた



ふたりではじめてお祝いできた、彼の誕生日に出会った本


彼の記憶の中にはないけれど

大切な、彼との思い出